第2は、メディアに対する国家統制が強い中国やロシアなどの国では、ネットは社会開放・解放の手段としてある程度有効だが、日本のような言論・表現の自由が法的に保障された国では、不満のはけ口として機能するにすぎない、ということである。その効果は、今回の参院選で、組織をもたない反原発論者が東京で1議席を獲得するのに役立った程度なのだ。
リアル社会が弱体化
第3は、ネット選挙の導入によって次第に選挙活動の期間と手法の枠が取り外され、選挙活動が日常化・24時間化していく一方で、有権者がネットでの発言で満足し、投票所に行かなくなる恐れがあることだ。その結果、リアル社会が弱体化しかねない。
第4は、メディア環境の操作にたけた者が執権者となり、ネットの力が過大に評価される懸念があることだ。それにより、真摯(しんし)に社会を理解しようとする人たちを「合理的無知」(rational ignorance=社会問題を勉強しても、選挙では1票しか行使できないからそうした勉強に時間を使う意味がないと考えて楽しみを優先する生き方)へと導いてしまう心配がある。