騒動の発端は自国文化に強いプライドを持つフランスのオレリー・フィリペティ文化相(40)の発言だ。フィリペティ文科相は「巨額投資に支えられる米国の映像・音楽産業と、欧州のそれでは比べものにならない」と資金力に物を言わせるハリウッド映画などを皮肉りながら、テレビや映画、音楽などの文化産業が保護されない限りFTA交渉入りを支持しない方針を明言。EU加盟国のうちドイツなど過半数がフランスに追随した。
これを受け、EUの欧州議会は5月23日、「文化と音楽・映像分野」を自由化対象から除くことを条件に、FTA交渉開始を容認する決議を可決した。
個人情報収集問題も影
EUの欧州委員会は当初は決議に条件をつけることに慎重だった。カレル・デフフト欧州委員(59)=通商担当=は「すでにコンテンツは国境を越えている」とし、文化産業の取り扱いにこだわるあまり交渉を阻げることを懸念していた。しかし、フランスの抵抗で流れが変わった。決議自体に法的拘束力はないが、FTA交渉は最終的に欧州議会の承認を得る必要があるため、欧州議会の意向は強い影響力を持つ。