一方で、上司は「君は協調性がない」と叱責する前に、するべきことがあったようにも思える。日ごろから、きちんとした指導をした上でこのような言葉を口にするならばわからないでもない。だが、実際は、適切な指導ができていない場合が多い。部下への指導は、相当難しいことであり、誰もが完璧にできるわけではない。自分では「部下にきちんと教えている」と思うのだろうが、部下からすると「さっぱり意味がわからない」などと思われていることも少なくない。それほど、人に教える、人を指導するということは難しいのだ。
最後に。基本的には、部下は上司の言葉ひとつずつを注意深く聞くべきだが、残念ながら、それができない場合もある。上司の中には、人格的に問題があったりする人もいる。社会常識から大きく逸脱した言動をとる人もいる。仕事のポイントを心得ていない人もいる。
それでも、部下である以上、激しく言い争ったり、みんなの前で反論することはできるだけ避けるべきだ。ただし、表向きは話を合わせておきながら、できるかぎり深入りはしないこと。あなたが上司との人間関係で損をしないために、はっきり言っておきたい。
“上司ごときで、損をする”なんてあまりにももったいないということを。
文/吉田典史
ジャーナリスト。主に経営・社会分野で記事や本を書く。著書に「封印された震災死」(世界文化社)、「震災死」「あの日、負け組社員になった…」(ダイヤモンド社)、「非正社員から正社員になる!」(光文社)、「悶える職場 あなたの職場に潜む「狂気」を抉る」(光文社)など、多数。近著に「会社で落ちこぼれる人の口ぐせ 抜群に出世する人の口ぐせ」(KADOKAWA/中経出版)も好評発売中。