ヨーロッパが機械化によって自然を収奪する「産業革命」を進めたのに対して、日本は自らの労働力を投入して生産性を上げ、棚田を造成し、森と水の循環を維持していく「勤勉革命」を実行していったのです。産業革命は森を破壊し、自然と人間を切り離しましたが、勤勉革命は森を維持し、自然と人間の共生につながりました。日本が現在でも世界有数の森林大国であることは、こうした日本人の自然観、哲学を背景としたものだったといえるのでしょう(※第2章 なぜ日本は、豊かな森と海を大切にし続けることができたのか? 52ページより)
自国を礼賛するような場合、ややもすると思い込みや勘違いが混ざってしまいがちで、必ずしも客観視したものとはいえないことがある。しかし同書は、つとめて客観的である。それは、西欧諸国などとの比較を盛り込んでいるだけでなく、研究者などの主張もうまく取り込んでいるからである。参考にした文献も、本文中で随所に紹介されているので、興味や関心を持ったら、そうした文献にあたるのもいいだろう。