雑誌の不振に危機感
無料アプリが相次いで誕生する背景には漫画雑誌の不振がある。出版科学研究所によると、平成7年に全体で13億4300万部あった漫画雑誌の推定販売部数は、25年には4億4千万部まで落ち込んだ。
井上さんは「電車の中でコミック雑誌を読む人をほとんど見かけなくなった。このままでは日本の漫画文化は衰退してしまう」と危機感を募らせる。樹林さんも「以前は立ち読みで作品を知り、読む本数が増えていくと雑誌を買ってくれたが、ある時期からひもでくくられたりして、漫画との出合いが失われてしまった。だからマンガボックスは究極の立ち読みツールなんです」と説明する。
多言語対応も視野に
両社とも、無料にすることで多くの読者をつかむ一方、配信漫画の単行本化や映像化などで収益を確保する計画だ。また、将来の海外展開も視野に入れ、一部の作品で英語版、中国語版を提供。同時配信により翻訳版が出るまでのタイムラグをなくし、海賊版への読者流出を防ぐ狙いがある。コミックウォーカーの古林英明統括部長は「今から作る漫画はすべて多言語に対応できるようにしたい」と話す。