「未来がある人のための本」である旅行ガイドが放つ明るさが、登場人物の過酷な精神状態と好対照をなし、物語のトーンを単色に染め上げない。
「悲惨な状況でもちょっと上から見て笑う姿勢は大事にしたい。本当に悲しいことって、いつか必ず起こるから。せめてそれまでは、何でも笑いにして成仏させたい気持ちがあるんです」
【プロフィル】西加奈子
にし・かなこ 昭和52年、イラン・テヘラン生まれ。エジプト・カイロ、大阪で育つ。平成16年にデビューし、翌17年に2作目の『さくら』がベストセラーに。19年に『通天閣』で織田作之助賞。25年には直木賞候補となった『ふくわらい』で本屋大賞5位、第1回河合隼雄物語賞を受賞した。ほかに『きいろいゾウ』『円卓』など著書多数。