自分ですべての戦略を決められる人はツイッターやフェイスブックでまったく縁のなかった人と知り合い、仕事に発展することは珍しくない。一方、公表する内容を自分で決めにくい大企業のビジネスパーソンは料理の写真とか無難な投稿に終始する。
原口さんのフェイスブックの個人アカウントも食事や趣味の投稿が多い。だいたいアイカをはじめるまでソーシャルメディアに冷淡だった。「ノマドと称する人たちが『世界と繋がる』とか言ってても、ぼくには関係ないね」とも40代後半の彼は思っていた。
これまで日本の大企業のイノベーションは技術系エンジニアから生まれやすいとみなされてきた。が、文系のイノベーターもグローバルなソーシャルコミュニティから出てくるのでは?との感をアイカに関与して彼は強くもちはじめた。
「ここでは『多様性』と『周縁性』という二つが理解の鍵になります。多様性は言わずもがなですが、変化は周縁からやってきます。コンテストを主催するアイカにとってメンバーの作品は、いわば周縁になる」
広告会社は今まで周縁の役割を担っていた。旅人や芸人の話を王様が好んで聞いたように、スポンサーは広告会社に周縁からの予知を求めた。そしてITの時代、スケールを越えたところからの旅人を迎え入れることができるようになった。