2016年“ベスト鉄道”セレクション&2017年“乗ってほしい”鉄道ベスト5

江藤詩文の世界鉄道旅
ウイリアムス=サウスリムを往復乗車したグランドキャニオン鉄道

 みなさま、新年あけましておめでとうございます。今年で6年目に突入するこのコラム、いつもご愛読くださりありがとうございます。少しお休みをいただいていましたが、心機一転2017年も世界と日本各地から鉄道旅の魅力をお伝えすべく、本日元旦からスタートです。今年も引き続き応援よろしくお願いいたします。

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 「国内の鉄道にも乗ってみたい」と新年に掲げた目標が実現し、国内の鉄道にもいくつか乗車した2016年。実際に乗った世界と日本の鉄道の中から、鉄道愛好家みなさまにぜひ乗っていただきたい列車を2016年の総集編としてセレクト。ランキング形式でお届けします。

■第5位 和諧長城号 中国・北京

“万里の長城へのアプローチ”という存在自体がドラマチックな鉄道。ネーミングもなかなか素敵だが、車内におしゃれ要素はまったくなく、混雑していて立ち乗り客も多いのが大陸らしい。私が乗車した列車の座席クラスは一等車と二等車。二等車の運賃は取材時で6元(約111円)と激安だった。売店のある食堂車も連結している。二等車にはカップ麺のにおいが立ち込めていた。

■第4位 GENBI SHINKANSEN 日本・新潟

 日本が世界への輸出を推進している新幹線とモダンアートを融合する(失礼ながら日本人離れした)センスのいいコンセプトにびっくり。独特の世界観を持つ写真家で映画監督の蜷川実花さんの作品を引き立てる黒い車体も大好きだ。イチ押しは15号車。現代芸術活動チーム「目」のメンバーとしても活躍する女性アーティスト荒神明香(こうじん・はるか)さんの作品が展示されている。

■第3位 ヒジャーズ・ヨルダン鉄道(アンマン駅)

 世界中、親日国であろうとなかろうと“鉄道マン”に限定するとどこでも日本好きが多い気がする。ここで出合ったのは1959年に日本車輌製造が製造したSL機関車と日本の鉄道好きな職員たち。アンマン=ダマスカス(シリア)の国際列車の復活を夢見て車両の手入れを行っていた彼らはいま、何を思っているのだろう。駅舎に併設した「ヨルダン・ヒジャーズ鉄道博物館」も見逃せない。

■第2位 グランドキャニオン鉄道

 世界遺産の絶景「グランドキャニオン国立公園」へアプローチする観光列車。観光の拠点となる街「ウイリアムス」と、ビュースポットが点在するグランドキャニオンの南側「サウスリム」を結ぶ。夏場はディーゼル機関車、冬場は蒸気機関車が客車を牽引。2時間15分の乗車中、本場のカウボーイがあれこれ楽しませてくれる。アメリカはこういったエンタメがほんとうにうまいと思う。

■第1位 肥薩おれんじ鉄道おれんじ食堂(日本・熊本&鹿児島)

 九州西海岸を眺めながら地元食材を使った料理とお酒(特に焼酎!)を楽しめる日本初のレストラン列車。車中でローカルフードを味わえるほか薩摩高城、阿久根、出水、水俣、佐敷の5つの駅では地元の人たちがホームで「駅マルシェ」を開催していた。飲み食いも楽しいが、強く記憶に刻まれたのは九州人らしいおおらかで温かいおもてなし。震災を乗り越えて現在は元気に通常運行している。

■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。ブログはこちら