えっ、そんなに少ないの!? 優秀そうに見えるのに日本人大富豪が少ない理由
提供:PRESIDENT Online日本はGDPに比してビリオネア数が少ない
日本は、米経済誌「フォーブス」発表の「2016年版ビリオネアランキング」の「国別順位」で27位だった。1ビリオン(10億ドル)以上の遺産を持っている人の数は、アメリカの20分の1、中国の9分の1にすぎないのだ。「えっ、そんなに少ないの」と意外に思う人は多いのではなかろうか。
しかし、国力を示す「GDP」(名目)を比べてみると、アメリカ(17兆3400億ドル)、中国(10兆3500億ドル)に次ぐ堂々の世界3位(4兆6000億ドル)。ドイツ(3兆8700億ドル)、イギリス(2兆9500億ドル)、フランス(2兆9300億ドル)を押さえながら、大富豪数でこれら3国に大差をつけられている。なぜなのか。
国力の尺度の一つ「人口」も、(1)中国13億7600万人、(2)インド13億1100万人、(3)アメリカ3億2100万人に対し、日本は1億2600万人で11位。日本が先進国のトップを走る”超高齢者大国”という事情を考慮しても、27位には合点がいかない。
ならば、「蓄財能力」とか「資産運用能力」が大きく劣っているのか。頭脳力を示す「ノーベル賞」の国別受賞者数は、(1)アメリカ345人、(2)イギリス114人、(3)ドイツ82人、(4)フランス57人、(5)スウェーデン32人ときて、日本はスイスと並ぶ22人で世界6位。
これだけ優秀な頭脳を持つ民族なら資産運用でも優れているはず。一体、どこに原因があるのだろう。
だが、企業の「売上高」とか「時価総額」(発行済み株式×株価)に注目し、世界ランキングをチェックすると、27位というポジションでおかしくないことに気づく。
日本企業の2015年度売上高トップはトヨタ自動車の約27兆円だが、時価総額は、米経済誌「フォーチュン」の世界ランキングによると、トヨタは26位なのだ。
時価発行総額で1位から11位までを独占しているのは、アップル以下アメリカ企業である。アメリカ企業以外でトヨタより上位にランキングされているのは、中国企業3社、スイス企業3社、香港企業1社、ベルギー企業1社の計8社しかない。50位まで枠を広げても、ランクインしているのは、ほとんどがアメリカ企業である。
日本企業の活力がビリオネア形成を阻んでいる!?
注意すべきは、儲かっているアメリカ企業のトップなら誰でもビリオネアになれる訳ではないということだ。
創業者かオーナー経営者として株式をたくさん保有しているか否か。つまり、企業業績が好調で巨額の配当を得られるかどうか。そこがビリオネアになれるかどうかの分かれ道だ。
それは「2016年版ビリオネアランキング」のべスト20を見ると、そのことがよくわかる。
「フォーブス」誌が資産額を推定計算する上で、保有株式、保有土地の評価額は極めて大きなウェイトを占める。日本が27位に甘んじているのは、上記のような「ビッグスケールの世界企業を創業・発展させた存命者が極めて少ない」という理由に加えて、長期にわたる「株式市場の低迷」および「地価の下落」の影響も大きい。
たとえば、株価。電子商取引企業「阿里巴巴(アリババ)」を1999年に創業した馬雲(ジャック・マー)は、2014年9月にニューヨーク証券取引所に上場し、初値が公開価格68ドルを大きく上回る92.7ドルをつけ、話題になったが、馬は、創業時に必要だった6万ドルの融資を銀行に断られ、友人たちに泣きついてやっと工面したという経緯がある。
馬の資産は、上場前の84億ドルから250億ドルへと3倍増、2015年ビリオネアランキングで33位に入った。同社の主要株主だったソフトバンクの孫正義も、資産も増やした。日本企業には、そういうド派手なことをやった企業の創業者やオーナーが皆無に近い。
その結果、2016年版ビリオネアにランクインしたのは、57位の柳井正(ユニクロの「ファーストリテイリング」創業者)146億ドル、82位の孫正義(無線通信の「ソフトバンク」創業者)117億ドル、163位の滝崎武光(産業用エレクトロニクスメーカー「キーエンス」創業者)72億ドル、228位の三木谷浩史(ネットサービス企業「楽天」創業者)56億ドル……ということになった。
(作家 城島明彦=文)
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