香港MTR・エアポートエクスプレス(1)“空港ギリギリ派”には嬉しすぎるチェックイン・システム
江藤詩文の世界鉄道旅国の玄関口となる国際空港と市内中心部を結ぶ交通システムには、その国の都市機能の成熟度が反映されていると思う。まぁ、空港を一歩出たとたんに煙草くさい白タクのおっちゃんに取り囲まれ、わぁわぁと客引きされるのも旅情を味わえていいものだが、料金をいちいち交渉したり、スマホで経路を確認することなく、安心して利用できる公共交通機関は移動中にもくつろげて使い勝手がいい。
世界には、空港に直結する鉄道がたくさんあり、これまでいくつかの国で乗車してみた。なかでもとりわけ便利なのが、今回ご紹介する香港の「エアポートエクスプレス」だ。香港MTRが運営するエアポートエクスプレスは、香港国際空港と九龍半島側の九龍駅、香港島側の香港駅とを最速24分で走る急行列車。空港から市内へ出るには、到着ホールにある巨大な案内板の指示に従って進み、エアポートエクスプレスに乗車して九龍駅または香港駅で下車する。このふたつの駅からは、主要なホテルを巡回する無料シャトルバスが運行している。安宿など停車対象外の宿泊施設に泊まる場合でも、エアポートエクスプレスの乗客なら近くのホテルで降ろしてもらえる。空港からホテルまでシームレスに移動できるわけだ。
というわけで、行きもとっても便利なエアポートエクスプレスだが、そのありがたみをもっとも実感できるのはむしろ帰りだ、と個人的には思う。九龍駅と香港駅では「インタウン・チェックイン」というサービスを導入していて、主要なエアラインに搭乗するのであれば、駅でチェックインをしてスーツケースを預けられるのだ。そしてここがポイントだが、搭乗手続きをして荷物を手放してから、もう一度市内に出ることができるのだ。もちろん、すでにチェックインは完了しているので、カウンターに並ぶ時間を見込んで空港に早めに到着する必要もない。保安検査や出国手続きのための時間は必要だけれど、極端にいえばボーディングタイムに間に合えばいいわけだ。
利用者が多い時間帯なら10分間隔で出発していて、基本的には定時運行が見込めるのもありがたい。駅を出ればすぐ繁華街なので、「茶餐廳(チャーチャンテン)」と呼ばれる香港式の庶民派カフェレストランに入り、コーヒーと紅茶を混ぜた不思議な飲み物「鴛鴦茶(ユンヨンチャー)」といった香港らしいB級グルメを味わいつつ名残を惜しむのが私の楽しみ方だ。ちなみに、身軽さゆえに路面店でマンゴーシェイクなどを調達して車内に持ち込みたくなるが、エアポートエクスプレスの車内は飲食禁止なのでご注意を。
■取材協力:香港政府観光局
■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。ブログはこちら
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