富裕層にモテるにはどうすればいいか… 本物のお金持ちと成金はちがう

提供:PRESIDENT Online

 お金持ちになればなるほど礼節をわきまえる--。それが世界の富裕層の共通認識だ。では、どんな人が彼らにモテて、どんな人がモテないのか。

 私は南カリフォルニア大学で知り合ったアジア出身の華僑留学生と結婚をし、夫婦2人で華僑やユダヤ人の富豪の方々から「本当のお金儲けの方法」を教わり、20代で最初の1億円の資産を築き上げました。それからというもの、いろいろな国のお金持ちの人たちと親交を深めています。その経験を踏まえていうと、お金持ちが嫌う人には3つのタイプがあります。

 1つ目は、時間にルーズで遅刻する人です。たとえば、華僑のお金持ちは有力企業のトップを務めていることが多く、当然のことながら彼らは“超高給取り”です。仮に年収が5億円として、月22日・1日8時間勤務だとすると、その時給は「5億円÷(22日×12カ月×8時間)=23万6742円」。さらに、それを“分給”に換算すると、「23万6742円÷60分=3945円」になります。

 もしも、面会を約束した相手が10分遅れてきたら、「3945円×10分=3万9450円」を無駄遣いしたことになります。

 こう説明すると「タイム・イズ・マネー」の意味がご理解いただけ、約束した時間を守らずに遅刻することが、重大なマナー違反だとおわかりいただけるでしょう。遅刻しないことは、相手の方の時間をリスペクトすることでもあるのです。

 そして2つ目は、相手の方のお話の腰を折る人です。誰しも自分の話を途中で遮られたらいい気持ちはしません。「この人は、私の話は聞きたくないのだな。だったら、もうお付き合いはやめにしよう」と思われてしまうことだって、十分にありえます。ユダヤの格言は「なぜ、耳が2つなのに、口が1つなのか? それは、自分のことを話すより、人の話を聞くほうがもっと大切だからだ」と戒めています。

 最後の3つ目が、フレキシブルな対応が取れない人です。日本人の皆さんは「マナーが大切だ」と聞くと、いわゆる“マナー本”を開いて、そこに書いてあることを杓子定規に守ろうとすることが多いようです。

 以前、真夏の時季に東京へ来たとき、高級仏料理店にお誘いいただいたことがあります。食前酒の代わりに温かい紅茶をお願いしたところ、お誘いしてくださった方が「普通はワインかカクテルでは……」と目を白黒させていました。

 実は乗ってきたタクシーの冷房があまりにもきつくて、そのことをお断りしたうえであえて温かい紅茶をお願いしたのですが、どうも従前からある仏料理のテーブルマナーに固執されていたようでした。本当に大切なことは、ゲストの状況を察して、フレキシブルに対応することであり、それが本当の意味での“おもてなし”なのです。

 茶道を学んで一目置かれる存在に

 ビジネスと日常、どちらの場においてもマナーとは、相手に対するリスペクトの気持ちが表れたものだと私は考えています。ぽっと出てきた成金ではなく、何代も続いている富豪のことを米国では「オールドマネー」と呼んでいて、彼らは一般の方と会うときでも、決して尊大な態度は取らず、丁寧な言葉で話をします。本物のお金持ちになればなるほど、どんな人と接するときでも、相手の方に対するリスペクトを大切にしているわけです。

 また、そうしたマナーは、人間関係をより強固なものにしていく原動力となり、ひいては自分自身の信用力アップにつながっていきます。そして「情けは人の為ならず」というように、初めから見返りを求めているわけでありませんが、やがて人と人との信頼関係の中からビジネスチャンスが生まれ、成功へと導いてくれるのです。オールドマネーの人たちは、そのことを肌身を通して知っているのです。

 それだけに、彼らの子どもたちに対するマナー教育は徹底しています。かなり前に欧州のある富豪のお宅を訪ねると、リビングにいた小さな子供たちがすっと立ち上がって会釈をしてくれ、その自然な立ち居振る舞いに感動しました。

 また、「ポケットに手を入れるような態度をしないよう、ズボンのポケットは縫い付けてあるのですよ」と教えていただいて驚いたのを、いまでもよく覚えています。人から信用され、いざというときには大勢の方々のサポートを得ながら、大切な財産を守っていける人間に育てるため、自ずとマナー教育にも力が入ってくるのでしょう。

 ここで、日本のビジネスマンの方が、海外のお金持ちや企業のトップのみなさんとパーティーなどで初めてお会いして、マナーに反することなく、親交を結ぶ第一歩を踏み出すためにはどうしたらいいのか、具体的な方法をアドバイスさせていただきます。

 「あなたを何とお呼びしたらいいですか」とお尋ねし、たとえば「ロンと呼んで」といわれたら、それからはそのファーストネームで呼びかけたらいいのです。

 日本人は「社長」「取締役」など役職で相手の方を呼ぶことが多いものの、どこまでその方の人格を認めているのか疑問に思います。逆に「そうですね、ロン」「ロン、私はこう考えます」というように会話に何度もファーストネームを挟むことで、相手の方の存在を認めていることを強調でき、さらに親しみも伝えられるのです。

 また、お付き合いが始まってからは、「人との触れ合い」を大切にしましょう。IT時代の現在こそハイテクよりハイタッチ(コミュニケーション)が必要です。たとえば相手の方の誕生日や結婚記念日などに、お祝いの品物を持って訪ねるようにします。

 何も値の張るものでなくて構いません。なぜなら、すでにモノでは満たされた方々だからです。むしろ「私のためにきてくれた」と感動していただき、相手の方の心が満たされることが大切なのです。

 本物のレディーもジェントルマンも、一生涯学び続ける覚悟を持った人たちだと、私はいつも考えています。そこで日本人でしたら、「茶道」を学んでみたらいかがでしょう。目に見えるお茶の作法だけでなく、茶道は日本の総合文化です。奥底に秘められたおもてなしの心を習得できるうえに、教養のある人間として一目置かれる存在になり、世界中のお金持ちの方々と互いにリスペクトし合える仲になれると思います。

 マダム・ホー ロサンゼルス在住の日本人投資家、作家、講演家。南カリフォルニア大学(USC)、UCLA両大学院修了。著書『世界一愚かなお金持ち、日本人』は8万部のベストセラーに。USCで奨学金を設立し社会貢献をしている。

 公式サイト http://www.madamho.com/

 (マダム・ホー 構成=伊藤博之 写真=Getty Images)