香港トラム・トラモラミックツアー(1)香港の名物トラムに1920年代レトロ車両が復活
江藤詩文の世界鉄道旅香港リピーターの鉄道ファンなら、いまや香港島のアイコン的存在になっているラッピングトラムに混じって、年初から見慣れない車両が走っているのに気づいているかもしれない。トラムを運営する香港トラムウェイズ社が、今年1月24日から予約制の観光ツアー「TramOramic Tour(トラモラミックツアー)」の催行を始めたのだが、この車両がすごい。
香港トラムは、いまから100年以上前の1904年に、26台の車両を用意して創業した。ツアーに使われるのは初期モデルの車両を復元したもので、1920年代に実際に街を走っていたルーフトップ付きの車両を細部まで再現しているという。トラム創業時、香港はイギリスの植民地下にあった。トラム用の車両はイギリスでパーツを造り、それを香港に運んで組み立てたそうだ。そのため車両デザインは、イギリスのトラムと似通っているという。創業時から、環境に配慮してゼロ・エミッションの電気のみを動力に採用。香港島北部の東西を結ぶ人びとの足として、開業当初は1階建ての車両のみだったが、現在ではご存じのように全車両が2階建てに変わっていて、現在も営業運行している2階建てトラムとしては世界最大規模となる1日20万人を運んでいる。
いつものトラムは地元民と観光客が入り混じり、常に混み合っているが、ツアーなら予約優先で36席の定員制。香港の風景をゆっくり楽しむことができる。車内には無料Wi-Fiが飛び、各座席には日本語を含む8カ国語に対応した音声ガイドが備え付けられていて、ナレーションを聞きながら街を眺めると、また新しい香港を発見できる仕かけだ。走行ルートは、上環のウエスタンマーケットからハッピーバレーを経由して銅鑼湾までで、乗車時間は1時間ちょっと。午前、午後、夜の1日3往復しているが、おすすめは午後6時半ウエスタンマーケット発の便。ルーフトップに上がり、香港らしい湿った生温い風と人びとの喧噪を感じながら、夕方から夜へと活気を増していく街並みを高い視点から見下ろす気分は最高だった。
■取材協力:香港政府観光局
■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。ブログはこちら
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