職場への妊娠報告はいつ、誰に? 妊婦が心がけたい人間関係作りのポイント
働く女性にとって妊娠したときに気をもむのが職場に報告するタイミングやその方法だ。産前だけでなく、産後の育児休業取得や職場への復帰をスムーズに乗り切るため、妊婦が心がけたい人間関係作りのポイントを聞いた。(中井なつみ)
迷惑かけると不安
「職場に妊娠を言い出せない」。神奈川県海老名市の看護師の女性(32)は、1カ月前に妊娠が判明した。職場は少人数で早朝や宿直の勤務を回しているため、「周囲に迷惑がかかる」と、妊娠10週を過ぎた今でも報告していない。
実際、女性のように悩む人は少なくない。日本労働組合総連合会(連合)が昨年1~2月、妊娠中に仕事をした経験のある20~49歳の女性千人を対象に行った調査では、「妊娠報告にためらいがある」と回答した人は34・3%。このうち、「職場に迷惑をかけると思った」と答えた人が45%を占めた。報告の時期は妊娠8週が14・2%と最も多く、13週以降に報告した人が25・6%に上った。
こうした現状を受け、『「働くママ」の仕事術』(かんき出版)の著者で、女性のキャリア支援を行う金沢悦子さんは「直属の上司にはなるべく早く報告して」とアドバイスする。
金沢さんによると、一般的に流産の可能性が低くなるとされる安定期(妊娠16週頃)以降に職場に報告をしたいと考える人が多い。しかし、「胎児の心拍が確認できた段階(6~8週)で報告した方がいい」と金沢さんは指摘する。妊娠初期からつわりに悩む女性は多く、職場に行けないこともある。報告しないで欠勤が続くと、上司が不信感を抱くことがあるからだ。
また、安定期以降の報告では産休に入るまでの期間が短くなってしまう。代替要員の確保が難しくなり、周囲から「もっと早く言ってほしかった」と思われることもあるという。
報告するときは、出産予定日や産休に入る希望時期など、「今後の見通し」をできるだけ詳しく伝えるよう心がけたい。その上で、同僚への報告時期なども相談する。「上司は頼られることで『何とかしてやりたい』とスイッチが入る。こまめに相談をすることで、妊娠をお互いの問題として認識してもらえる」(金沢さん)
また、上司への報告と同様に重要なのが「社内の先輩ママ」を探すこと。妊娠や出産の実体験が参考になるほか、保育園探しや復帰後の仕事の仕方についてもアドバイスをもらえるなど何かと心強いからだ。
一方、職場内には不妊治療に取り組んでいる人がいるケースもある。報告は「ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」と控えめにする配慮をしたい。
役立つ「連絡カード」
妊娠中、迷惑をかけたくないと無理をして仕事をするのは危険だ。出産ジャーナリスト、河合蘭さんによると、腹部の張りや出血などに気付いていても仕事を休めず、早産の一歩手前の切迫早産になる人は少なくない。そうなると絶対安静の入院になるケースもある。
体力的につらいことを職場で言いづらい場合は、医師が妊婦の体調や配慮すべき事項などについて職場に伝えるために記入する「母性健康管理指導事項連絡カード」が役立つ。河合さんは「勤務軽減の指示なども書いてもらえますよ」とアドバイスしている。
関連記事