女性ホルモン減少…「更年期」の不調 早め受診で原因究明、治療を
閉経前後の「更年期」の女性は心身に不調が出やすく、生活に支障が出ることもある。親の介護や子供の独立など心配事が増える時期に重なる上、女性の活用が進む中、管理職として重責を担いながら症状に苦しむ人もいる。専門家は「症状が重ければ早めに医療機関を受診してほしい」と話している。(油原聡子)
社員対象にセミナー
「更年期の症状は周囲には分かりづらいんです」
女性の活用を進める損害保険会社「損保ジャパン日本興亜」は2月下旬、社員を対象に更年期について理解を深めるためのセミナーを初めて開催した。
医師が更年期に出やすい症状や対処方法などを説明。予想を70人上回る190人が参加した。「詳しく知っておきたい」と男性の参加者もいた。同社の広報担当者は「女性は更年期に不調が出ることを広く知ってもらいたかった」と狙いを話す。
更年期は、閉経を挟んだ前後10年を指す。日本人女性の閉経年齢は平均50歳前後といわれており、個人差はあるが、45~55歳が更年期に当たる。この時期に起こるさまざまな心身の不調が「更年期症状」だ。治療が必要な場合は「更年期障害」と呼ばれる。
子供の受験や独立、親の介護などが重なり、ただでさえ負担の大きい時期。最近では、管理職として重責を担う女性も少なくない。このため、社員を対象に啓発のためのセミナーなどを開催する企業が増えている。
女性ホルモン減少
「更年期は、体内で女性ホルモンが減少し、さまざまな症状が出る時期。薬や病院と上手に付き合って乗り越えてほしい」と話すのは、東京女子医科大学東医療センター性差医療部准教授の片井みゆき医師だ。
更年期の症状は、主に女性ホルモンのエストロゲンの欠乏によって引き起こされる。卵巣機能が低下し、エストロゲンの分泌が減るからだ。
更年期の症状として知られているのが、ホットフラッシュ。急に顔がほてったり、汗をかいたりする。このほか、不眠やイライラ、不安感などさまざまな症状が出る。片井医師は「生活に支障がある場合は、早めに医療機関を受診して」と話す。婦人科のほか、最近は女性専門外来も増えてきている。
治療法は、漢方薬の処方や女性ホルモンの補充が中心。ホルモン補充療法には経口剤のほか、貼付剤やジェル剤が使われている。「ホルモン剤を使えば数日でも効果が出る。1~2カ月で症状もだいぶ落ち着きます」と片井医師。
女性ホルモンは、子宮体がんや乳がんを増殖させるが、事前に乳がんや子宮体がんがないことを確認して定期的な検査を行えば、5年以内の使用では乳がんの発症率に影響はない。その後発症率が増えたとしても、10万人当たりで数人程度とされる。
治療をしても症状が落ち着かない場合は、別の病気の可能性も。「特に注意しなければならないのが甲状腺に関する病気」と片井医師。女性に多い甲状腺機能異常と更年期の症状はよく似ているからだ。片井医師は「治療しても症状が改善しない場合は、ほかの病気の可能性もある。確認してもらうことが大切」と指摘する。
生活見直しを
女性ホルモンの減少に伴い、体内ではさまざまな変化が起きている。症状の有無にかかわらず、「更年期は自分の体と向き合うことが必要な時期」と片井医師は語る。
女性ホルモンが減ると、コレステロールの代謝が低下するため、動脈硬化のリスクが高まる。また、骨密度が低下し、将来骨折しやすくなる。片井医師は「健康維持のために、動物性脂肪を控えたり、運動習慣を持ったりして、これまでの生活習慣を見直してほしい」と話す。
■「母から打ち明けられた」6割
小林製薬の調査によると、更年期障害について、母親から打ち明けられた女性は6割に上る。調査は平成26年6月、更年期障害を経験した母親を持つ30~40代の女性312人を対象に行われた。
それによると、母親から更年期障害について打ち明けられた女性は61・5%だった。一方、母親と更年期障害についてじっくり話した女性は17%にとどまった。
また、母親が更年期障害だと知ってどう思ったかを尋ねたところ(複数回答)、「自分も将来同じようになるかもと不安に思った」「年を取ったから仕方ない」がそれぞれ40・7%で最も多かった。
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