月面の環境は過酷だ。「レゴリス」という粉状の砂に覆われ、昼夜の温度差は250度以上。ロケットの打ち上げには搭載物1キロ当たり約1億2000万円かかる。チームは探査車の設計を7回変更し、課題解決へさまざまな工夫をした。
車体の素材には、飛行機に使われる軽くて強い炭素繊維強化プラスチックを採用。これにより全体の重さが当初の約10キロから4キロに減り、打ち上げコストの大幅削減につながった。レゴリスでは車輪は空回りしやすいため、歯車の形にし、眼鏡フレームに使われる柔軟性のある特殊プラスチックで作った。
月はほぼ真空で、太陽からの熱や宇宙放射線がじかに伝わる。表面温度は昼に100度以上、夜はマイナス150度以下になる。機器の劣化や誤作動を防ぐため、外装はフッ素樹脂を施し、車内が60度からマイナス25度に収まるようにした。温度差に耐える接着剤も開発した。
最終試験では、月面に見立てた鳥取砂丘で走行性能を調べたり、真空や振動への耐久性を確認したりする。問題がなければ12月28日にインドチームの月着陸船に相乗りし、打ち上げる。到着は約1カ月後の予定だ。
袴田代表は「優勝を目指し、打ち上げまでの準備を確実に進めていく」と意気込んでいる。