こうしたきめ細やかな対応が選手に好評だ。たとえば大リーグ通算12年で2210安打・278本塁打・通算打率3割7厘のカノ選手クラスになると、大手メーカーが巨額の契約金で専属契約を結び、用具の無償提供も含めて広告塔とするのが一般的。一流選手は、グローブ、バット、トレーニングウエア、防具など、それぞれの別のメーカーと契約を結ぶことも多い。
だが大手とは異なり、有名選手に契約金を支払わない同社では、用具の無償提供のみを行う。それでも選手本人が納得して使い、気に入ると追加で製作依頼が来て、他の大リーガーからも依頼が来る。こうして知名度や評価が高まると、マイナーリーグの選手やアマチュア選手からの注文が増え、有料での販売個数が拡大するというビジネスモデルだ。「最近はインスタグラムでも発信し、大リーガー本人や代理人からの依頼が増えました。総じて外国人選手は気に入ると、野球少年のように喜んでくれます」(永井氏)。
■大手に勝つ●その2「商品を絞り、強みを深掘り」
また、永井氏は自社商品の特徴を次のように語る。
「当社が手がける野球用品は、主力の防具以外に、グローブ・ミットが中心です。バットやスパイクなども手がけますが、大手メーカーのように幅広い商品を扱う気はなく、自社の得意分野に絞っており、丁寧な製作を心がけています」
実は、永井氏はかつて前身となるベルガード株式会社の社員だった。1935年に創業したベルガードは、当初はボールを製造していたが、業界内での評価を高めたのが防具。国内外の大手メーカー防具のOEM(相手先ブランドに合わせた商品供給)を積極的に担い、一時は日本国内のプロ野球捕手が使う防具の多くは同社製だったという。2000年代以降は韓国プロ野球にも進出。当地では防具・グローブメーカーとしての存在感を増していた。