--コンビニでの仕事はいつからされていますか?店長さんは受賞のことをご存じですか?
「店長にはそんなに詳しく小説のことは伝えていないので、多分知らないのと思います。初めてバイトをしたのは大学生の頃でしたが、主人公のようにずっと続けていたわけではなく、小説に専念したこともあるし、違うバイトをしていたときもあります。ずっとコンビニだけに専念していたわけではないのです」
--改めて、受賞の連絡を聞いたときの気持ちは?
「担当さんと2人でいつもどおりおしゃべりをしながら、待っていました。突然受賞の電話がきたときは、まだ、信じられなくて…。川上さんの言葉を聞いて、だんだんと実感が湧いてきました」
--両親にも作家だと言っていない時期があったとか
「デビュー当初は言わず、母にだけこっそり言って小説を書いていたんですが、ある日、“バレてるよ”と知らされました。(芥川賞の)候補になった時点で私ではなく、(知人から)家族のところにいっぱい連絡がいったようで“そういうことになっているみたいね”と家族からメールをもらいました」
--行き詰まるような切実なテーマが多かったが、今作は笑えた。心境の変化は
「そうですね。シリアスな小説を書いているときも、“笑ってしまった”と言われるのはうれしかった。そういう部分をふくらませたかった。人間をもっとユーモラスに、もっといつくしむようなまなざしで書きたいと。読んでユーモアを感じる小説を書きたかった。今回、初めて実戦できたのかもしれない。自然にユーモアがでてきた」