■「負の遺産」からの脱却必要
NHKの松本正之会長は5日の定例会見で、「JAPANデビュー」をめぐる控訴審判決について「判決内容を精査している。今後の対応はその結果を踏まえて判断したい」と述べ、上告を検討していることを明らかにした。同番組は埼玉県の県立高で台湾への修学旅行教材として生徒に視聴されていたことが分かり、県議会などが問題視。NHKにとって決して「過去の番組」とはなっていない。
松本氏は3日の衆院総務委員会で、平成23年に会長に就任後、番組内容を事前確認するNHKの考査部門を会長直属組織にするなど「再発防止策」を強化したことを説明した。それでも、オスプレイや特定秘密保護法案などをめぐる報道に対し、「一面的」「偏向している」といった批判があるのがNHKの現状だ。
こうした批判は、次期NHK会長の人選にも影響を与えるとみられている。来年1月の退任を表明した松本氏だが、松本氏にとって「JAPANデビュー」裁判は福地茂雄前会長から引き継いだ「負の遺産」だった。台湾の人々を傷つけた番組作りを断罪した今回の判決を真摯(しんし)に受け止めることは、負の遺産から脱却しようとするNHKの姿勢を示すことにもなる。