あまりに短絡的
賠償を認められたのは、原告団の一人でパイワン族の高許月妹(こうきょげつまい)さん(番組では「高許月」と誤記)。放送で父の写真を見せられた高許さんは日本語で「かなしい」と発言。「生前、父親は博覧会について子供たちに語ることはありませんでした」とのナレーションが流れた後、高許さんがパイワン語で話す映像に「悲しいね。この出来事の重さ語りきれない」との日本語字幕が表示された。
しかし、高許さんは放送後「突然の父の写真に、自然に涙が流れた」と説明。原告側は高許さんが「父が懐かしい、愛しい」との意味で「かなしい」と語ったと訴え、取材時に「『人間動物園』とも『見せ物』という言葉も使わず、写真を見せられた」として、発言の真意をくんでいない恣意(しい)的編集と主張した。
これに対し、NHK側は「『人間動物園』という言葉を使わなかったが、『見せ物』という言葉で趣旨を説明した」として取材や編集は適切だったと反論。1審は高許さんの発言をめぐるスタッフの「誤認識」に理解を示し、原告側の訴えを退けた。
2審も恣意的編集は認定しなかったものの、当時の高許さんの日本語能力が減退していた可能性や、スタッフからの説明を侮辱と受け取り、困惑した可能性を指摘。意味ありげなナレーションを加えたことも「あまりにも短絡的」とし、「博覧会で見せ物にされたとの先入観を持っていたため、取材協力者の好意を土足で踏みにじるような結果を招いた」と結論づけた。