人種差別的言葉
2審は「人間動物園」という表現をめぐり、1審の判断を大きく覆した。
1審は「『人間動物園』で見せ物にしたことを過去の歴史的事実として紹介したにすぎない」としてNHK側の主張を認め、表現の妥当性に踏み込まなかった。2審はパイワン族の日英博覧会出演について「民族の誇りを持って自発的に行ったとする見解も有力。パイワン族の間では今でもよい思い出」と指摘。その上で、番組ディレクターが「一部学者が唱えた『人間動物園』という言葉に飛びつき、番組の大前提として採用した。志と誇りを持って出向いたパイワン族や取材に応じた高許さんを侮辱した」として、父娘の人格権侵害を認めた。
さらに「人間動物園」との表現について「人種差別的な意味合いを感じさせ、嫌悪感すら感じる言葉。広く娯楽一般を意味する『見せ物』とは本質的に意味合いが異なる」と断じた。
なお残る問題点
高許さん以外の台湾人、パイワン族の名誉毀損(きそん)については「当時の日本政府を批判しようとした報道も表現の自由として尊重されるべきだ」として、NHKの法的責任を認めなかった。
しかし、同番組をめぐっては、台湾統治下の暴動・鎮圧を「日台戦争」と表現▽台北一中の南方系台湾人を漢民族と紹介▽台湾の中学教科書が大きな功績と伝える後藤新平の諸政策などを「日本統治の深い傷」と表現-など、判決が指摘した以外にも「表現の自由」では片付かない多くの問題点が明らかになっている。