内需が鈍化する中、中小企業による海外進出が活発化してきたが、特許庁企画調査課の伏本正典・特許戦略企画調整官は「海外には思わぬ落とし穴がある」と指摘する。
プラント関連の富士化水工業(東京都)は、中国で発電所の脱硫設備の建設を請け負った際、現地企業から脱硫装置の技術について特許侵害と訴えられた。
しかし、その中国企業が同国内で保有する特許は富士化水が請け負った設備については触れられていなかったという。当然、富士化水は「(その特許とは)関係がない」などと主張。さらに同じ設備は台湾にもあり、「中国でも公開されている成熟した古い技術」と抗弁したが、中国当局は認めず、2009年に約6億6000万円を支払う判決を出した。
こうした思いもよらない形で、知財が侵害されるケースは中国を中心に海外で後を絶たない。前田金属と富士化水のケースは異なるが、一方で共通しているのは知財に精通した人材が不足していることだ。