世界初快挙 金星探索機「あかつき」失敗からの奇跡的復活

 

 金星探査機「あかつき」が深刻なトラブルを乗り越え、息を吹き返した。機体が損傷して惑星の周回軌道投入に失敗した探査機の復活は世界初の快挙。チームは努力と執念で奇跡的な成功をつかみ取った。

 この5年間、最も懸念されたのは、想定を最大3割も超える厳しい太陽熱の悪影響だった。あかつきは最も太陽に近づく近日点を9回も通過。熱に強い面を太陽側に向けて対処したが、近日点のたびに機体の温度は大きく上昇した。

 小型エンジンによる軌道投入も難しい作戦だった。1基当たりの推力は主エンジンの約20分の1。通常は短時間しか噴射しないが、今回はパワー不足を補うため4基を20分間も噴射させる荒業に挑んだ。

 宇宙探査の歴史に詳しい的川泰宣JAXA名誉教授は「今回の成功で日本の国際的な存在感は間違いなく高まった」と話す。惑星研究で日本はこれまで海外のデータを利用してきたが、今後はデータを提供できる立場になるからだ。惑星の気象を解明することは、その惑星の進化を理解することにもつながる。日本の粘り強さは、海外に驚きをもって迎えられそうだ。(黒田悠希)