宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業は24日午後3時50分、カナダの通信会社の衛星を載せた改良型H2Aロケット29号機を、種子島宇宙センター(鹿児島県)から打ち上げた。2段目のロケットは4時間半かけて飛行し、高度3100~3万6000キロの楕円(だえん)軌道で衛星を分離。国産ロケットとして初めて商業衛星打ち上げに成功した。
H2Aは23回連続で打ち上げに成功し、成功率は97%となった。悲願だった国際的な打ち上げ市場への参入に向けて大きな弾みになりそうだ。
JAXAは今回、従来より遠くに衛星を運ぶため、2段目のエンジンと機体を改良し、初めて打ち上げた。分離後に衛星が自力で飛ぶのに必要な燃料が少なくて済み、軌道上での運用寿命が延びるのが利点。三菱重工は「衛星に優しい」サービスで今後の打ち上げ受注増を狙う。
衛星はテレサット社の通信放送衛星で、重さ約5トン。欧州やアフリカ、南米などをカバーする計画。打ち上げ費用は120億円前後。
H2Aが静止衛星を分離するまでの飛行時間はこれまで約30分だった。今回はエンジンの噴射回数を増やし、より静止軌道に近い位置に衛星を届けた。燃料の蒸発を防ぐため、機体の色を一部変更。飛行中の姿勢制御も工夫した。JAXAは改良のため開発費92億円を投じた。