気軽に飲めるアルコールの一つとしてすっかり定着した「ハイボール」のビジネスに“異変”が起きている。サントリーやキリンなど業界大手の間で、「輸入ウイスキー」や「樽(たる)詰め」のハイボールへの注力が加速しているのだ。コンビニエンスストアにも並ぶ「ジムビーム ハイボール缶」(サントリースピリッツ、2016年4月発売)は、その一例だ。変化の裏には、ビールや焼酎といった他の酒とは異なるウイスキー独特の事情に加え、昨今の雇用情勢も作用している。
飲食店から要望
東京都新宿区の明治神宮外苑で毎年夏にオープンする「森のビアガーデン」。今年はビールに加え、新たな主役が登場した。キリンが輸入するウイスキー「ホワイトホース」をソーダで割った、飲食店向けの樽詰めハイボールだ。
「スコッチ(スコットランド産ウイスキー)を使った樽ハイボールは業界初」と、キリン・ディアジオの小泉達也ウイスキーカテゴリーディレクターは胸を張る。銘柄にちなんで「うまソーダ」の愛称も付けた。年内に2000店舗、来年中に5000店舗での取り扱いを目指す。
同商品は、キリンとしても初の樽ハイボール。ウイスキーやビールなどを納める取引先の飲食店から「樽製品化」の要望が強まり、発売に踏み切ったという。
その背景にハイボール人気の定着があるのはもちろんだが、もう一つ、外食業界でも深刻化している「人手不足」の問題も見逃せない。3大都市圏の6月のアルバイト・パート平均時給は、過去11年間で最高の1012円(求人大手リクルートジョブズ調べ)。外食系に絞っても、昨年6月より24円上がって978円だった。