「世界はこれまでにないスピードと大きな変化を示す激動の時代にある。未来のために今を変える覚悟が必要。今後、目指すべきは既存の枠にとらわれない『未来のモビリティ社会』の実現だ」。
新入社員入社式でこう変革のメッセージを発し、4月にグループを含めた経営体制の大幅な刷新に踏み切ったトヨタ自動車の豊田章男社長。11月に創立80周年を迎える節目の今年、次代も自動車産業をリードすべく布石を打ち始めたトヨタに新たな強敵が忍び寄っている。
トヨタのライバルといえば、世界販売の首位を争う独フォルクスワーゲンや、三菱自動車も傘下に収めた日産自動車・ルノー連合のカリスマ経営者、カルロス・ゴーン氏といったところが真っ先に思い浮かぶかもしれない。だが、豊田社長の言葉通り、かつてない変革期に入った自動車産業の競争図はこうした同業の枠に収まらない。自動運転など次世代技術では既にアップルやグーグルといった米IT大手との競合の可能性も指摘されている。では、次代を見据える豊田社長の脅威となりそうな新たな相手とは?
ヒントは(1)トヨタを株式時価総額で上回るアジアのトップIT企業(2)世界最大の自動車市場となった中国での強力な顧客基盤(3)シンボルはペンギン。
IT業界やSNSに詳しい方はもうおわかりだろう。そう約8億人近いユーザー数を誇る中国最大のメッセージアプリ「WeChat(ウィーチャット)」を運営するテンセント(騰訊控股)だ。