テスラの昨年の生産台数は大幅に伸びているが、8万3922台(前年比約64%増)と、事業規模ではトヨタに遠く及ばない。ただ、4月にはフォードやゼネラルモーターズ(GM)を抜いて時価総額で一時、米自動車メーカーの首位に躍り出るなど、次世代エコカーの有力メーカーとしての技術力と成長性に対する市場の期待は高い。テスラの「モデル3」は価格が3万5000ドル(約410万円)と他のテスラのEVに比べて手が届きやすく、16年3月の予約受け付け開始以来、37万台超を受注しているという。
規模の拡大に向け本格的な量産モデルを立ち上げるテスラと、中国政府が新エネルギー車としてEV普及を強力に後押ししている中でのテンセントの急接近には、次世代エコカー市場の覇権への野心があるとみるのが自然だろう。
さらに、テンセントとテスラの接近は、次代の自動車技術の大きな潮流とされる「コネクテッドカー(つながる車)」の分野でも強力なタッグといえる。
テンセントは基幹事業のSNSで蓄積したネット技術に加え、自動運転などでも大きな役割を果たすとみられている人工知能(AI)の研究開発にも投資している。3月に東京で開催された世界の囲碁AIが競う「UEC杯コンピュータ囲碁大会」の決勝で、日本最強の囲碁AI「DeepZenGo」を破って優勝したのはテンセントが開発したAI「絶芸」だった。米フォーブス誌(電子版)によると、テンセントの出資先の滴滴も米シリコンバレーに開設したR&D拠点で、アップルやグーグル出身の技術者とも協力し、自動運転などのAI技術者の採用・開発活動を強化している。