こう説明するのは運営会社、スガキコシステムズ株式会社・取締役の菅木寿一(じゅいち)氏だ。創業一族の孫世代の同氏も、自宅近くにある店の味に親しんで育った。戦後すぐの1946年に開業した同社は、創業翌々年(1948年)にラーメンが加わり、店名が「すがきや」となった。当時は1杯30円。1950年代は70円、60年代は90円、76年から78年まで140円で販売した。近年は原材料などの高騰により、270円、290円、300円と小刻みに値上げして昨年3月から320円となったが、創業以来、庶民価格の店なのだ。
320円でラーメンを出せる秘訣は、麺を自社で一括製造するなど徹底してコストを見直した名古屋流経営の成果だ。
「そうした歴史もあり、お客様は当店に対して麺類300円台を求める傾向が強い。『味噌ラーメン』(430円)や『あんかけ温野菜ラーメン』(430円)など、季節限定も含めて400円台の麺類も揃えていますが、赤丼に比べると販売数は多くありません」(菅木氏)
全麺類が500円未満という低価格だが、400円台のラーメンを「スガキヤにしては高い」と感じるのは、ブランドイメージからだろう。この価格戦略は、かつての看板メニュー「290円ラーメン」を2014年に販売中止にした幸楽苑とは大きく異なる。筆者は同店も定点観測してきたが、現在、幸楽苑のメニューは税込600円台の麺類が中心。平日のランチタイムには600円台、700円台のセットも多いが、それ以外は麺類+サイドメニュー(たとえば餃子と半チャーハンで+475円)を頼むと、大半が1000円を超えてしまう。