富裕層は宿泊や移動、食などで普段の生活とあまり遜色ない滞在の快適さを求める。だが現状では高級レストランの料理は新幹線では食べられない。飛行機でファーストクラスに乗っても降りるときにリムジンを横付けできない。つまり富裕層向けサービスが皆無ではないが、“点”での提供にとどまり、快適さに“切れ目”が多いのだ。
今後の鍵を握るのは、切れ目のないサービスの浸透になる。
JR東日本は来年5月から豪華観光電車「トランスイート四季島」を運行させる。出発する上野駅に設置された専用ラウンジや、高級ホテルもかくやという快適な車内、超一流シェフによる料理まで、旅程中に不自由を感じさせないサービスが売りだ。5、6月出発分では、日光や函館を巡る3泊4日コースが最高1人95万円にもかかわらず完売。中には申し込み倍率が76倍の設定日もあった。海外からも中国や香港、韓国を中心に申し込みがあったという。
人材サービスを展開するヒト・コミュニケーションズは海外富裕層をターゲットに、「ジャパンリムジンサービス」を設立、運転手付きリムジンを使ったオーダーメードツアーを提供するサービスに乗り出した。メルセデス・ベンツのリムジンをはじめとする広々とした車内は高速無線LANを完備、多言語対応のコンシェルジュが案内するほか、好きな音楽やアロマまで準備する。リムジンサービスの柿内裕一社長は「日本では午前中のホテルのチェックアウトが多くて荷物が負担になるなど、訪日客が細かな不便を感じているが、これを一つ一つ解消することで好評を得ているようだ。今後も需要は伸びる」と期待感を口にしている。(佐久間修志)