【下平】成熟したマーケットにおいては、同じ都市でも街によってまったくビジネスモデルが違う場合があります。そのとき、一緒に店づくりをしていくのはフランチャイジーのオーナーさんです。長年その街に住んで、地域に貢献しているオーナーさんにしかできない店づくりがあります。オーナーさんたちと一緒に店づくりを行っていくのが、我々の戦略の一つです。
現在はフランチャイジーの比率が68%になり、10年前と逆転しました。地域に特化したオーナーさんですから、組織も地域に特化しなければいけません。そこで、昨年から地区本部制度を復活させて、フランチャイジーを支える活動を行っています。こうした部分は、あまり目立ちませんが、マクドナルドの土台を支える部分だと考えています。
--ある時期まで、大型店を含めて閉店がとても目立っていました。今後は店舗を増やしていくのでしょうか?
【下平】戦略的閉店は今年で終了しました。これから成長の段階に移行することになりますが、まだまだ既存店への投資が十分に終わっていません。既存店を改装し、QSCを上げて、新たな人材を採用してトレーニングを行う時期だと考えています。今は店舗を増やすというより、土台の部分を強固にしていきたいですね。
振り返ってみると、10年ごとにマーケットは大きく変わっています。それまで成功していたビジネスモデルが通用しなくなるときが来る。ドライブスルー店舗は、ずっと成功していましたが、ある時期から通用しなくなりました。ならば、また新しいビジネスを考える。マクドナルドの45年の歴史は、ずっとその繰り返しです。どんどん変化できることが、マクドナルドの強みだと思います。落ち込んだときこそ、成長の契機なのです。
「変われること」がマクドナルドの強み
--変化できずに失速していく大企業が多い中、どうして変化していくことができたのでしょう?
【下平】我々は自分たちのことを大企業だなんてまったく思っていません。一介のハンバーガー屋さんですよ(笑)。グローバルブランドの栄光だけで商売はできません。地域を大切にして、お客様一人一人を大切にしない限り、成功は絶対にないでしょう。こうした考えの下で、QSCの向上も、メニュー開発も、地域に特化した戦略も、一貫して通してできたことが、2年間という短い期間で復活できた要因だと思います。ただ、お客様の変化にあわせてマクドナルドも変化していかないと、すぐに置いていかれてしまうでしょうね。
(文=大山くまお)(PRESIDENT Online)