日本政策金融公庫は中小企業やベンチャー向け特別貸付制度「新事業育成資金」の2016年度上期融資実績が、前年同期の2倍を上回る535億円となり、2000年の創設以来、過去最高を記録したことを明らかにした。金額ベースでは15年度全体の実績を上回った。政府が成長戦略の一環として補助金制度拡充など中小・ベンチャー支援を強化していることに呼応し、中小・ベンチャーが新規事業への取り組みを積極化していることが裏付けられた。
融資限度額が6億円の新事業育成資金の上期実績は企業数で前年度比66%増の967。金額ベースでは2.3倍と、すでに15年度の年間実績を55億円上回っている。
過去の実績を大幅に超えた理由の一つは、中小事業者の設備投資や技術開発の後押しを目的とした「ものづくり補助金」に代表されるように、SBIR(中小企業技術革新制度)補助金を活用したケースが増えていることにある。
技術開発を踏まえ、事業化に向けた運転資金を得るため新事業育成資金を活用するもので、その企業数は前年同期比2.4倍の586社となった。また、特許などの知的財産権を活用し新事業に取り組む企業による利用も増加した。
新事業育成資金の融資先は、モバイルデバイスを活用したクラウド型電子薬歴管理システムを開発するグッドサイクルシステム(東京都渋谷区)や、電子商取引の不正注文検知サービスを提供する「かっこ」(東京都港区)など。