高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県)の廃炉方針が事実上固まったことにより、原発を持つ大手電力には、核燃料サイクルの維持という新たな重責がのしかかる。核燃料サイクルの軸足が、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を使う「プルサーマル発電」へのシフトを余儀なくされるためだ。
「もんじゅに関係なく(核燃料サイクルを)進めていくことは可能だ」
電気事業連合会の勝野哲会長(中部電力社長)はこう強調した。MOX燃料を通常の原子力発電所で燃やすプルサーマル発電の拡大を視野に入れた発言だ。
原発でウランを燃やすとプルトニウムが生じる。その削減は大きな課題だ。
使用済みの核燃料を再処理して取り出したプルトニウムとウランを、燃料に再利用する核燃料サイクル政策は、原発を持続的な電源として活用する前提だった。
電事連は平成27年度までに全国の原発16~18基で、プルサーマル発電を導入する計画だった。
しかし、現在は稼働中の四国電力伊方3号機(愛媛県)のみにとどまる。東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発事故後、プルサーマル発電は停滞しているのが実情だ。
大手電力は原発停止で代替する火力発電の燃料費負担が膨らみ、業績が悪化。電力小売りの全面自由化で異業種との競争も激化している。コスト削減などの経営合理化も限界に近い。
電力業界では、もんじゅの廃炉方針に伴う高速炉計画の転換で『政府などがプルサーマル発電の拡大を後押ししてくれるのではないか』との観測も浮上する。だが、MOX燃料は通常のウラン燃料より高価で、大幅な収益拡大にはつながりにくいとされる。安全や電力の安定供給だけでなく、核燃料サイクルの維持という“義務”が加われば、大手電力の経営の新たな制約ともなりかねない。