12年6月からは、安全性が確認された魚種に限り、試験操業と販売を始めた。1キログラム当たり50ベクレルを自主基準とし、漁協と水産試験場で毎週200検体前後を検査している。結果、ほとんど不検出で、操業の対象は73種に増えた。とはいえ昨年の漁獲量は、震災前の5.8%にすぎない。
県農林水産部は「新・小名浜魚市場に続き、相馬市磯部水産加工施設が竣工(しゅんこう)した。9月には相馬原釜地方卸売市場などができる。ヒラメやマアナゴの出荷制限解除を機に『常磐もの』を復活させ、風評という壁を破りたい」と意気込む。「一日も早く本格操業を」と、地元漁協の関係者らも口をそろえる。
地道な調査による科学的データで風評を払拭し、福島県沿岸の漁業再開につなげたい。
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【プロフィル】東嶋和子
とうじま・わこ 科学ジャーナリスト、筑波大・青山学院大非常勤講師、筑波大卒。米国カンザス大留学。読売新聞記者を経て独立。著書に「人体再生に挑む」(講談社)、『水も過ぎれば毒になる新・養生訓』(文藝春秋)など。