□産経新聞客員論説委員・五十嵐徹
熊本地震で、サプライチェーン(部品供給網)の分散化の遅れが改めて問題になっている。
震源地となった熊本、大分両県をはじめとする九州中部地域には、自動車や半導体など日本の基幹産業の関連工場が密集している。今回の地震は、その心臓部を直撃した格好で、トヨタ自動車やソニーなど日本を代表する企業が、一時、部品供給を断たれ、製品づくりがストップするダメージを受けた。
教訓生かされず
トヨタは、国内に16ある完成車の組立工場のうち、15工場までが操業停止に追い込まれた。その後、順次操業再開にこぎつけているものの、完全復旧には、なお時間がかかりそうだという。
ソニーはスマートフォン向けの画像センサーで世界トップのシェア(占有率)を誇る。その主力工場は熊本県内にあるが、復旧のめどは立たないままだ。余震がなかなか終息しないことも復旧の遅れにつながっている。
部品供給網の断裂は、2007年の新潟県中越沖地震や11年の東日本大震災でも大きな問題になった。