吉田氏が経験したように、自力で起業するために全てを売るような手法は、最近ではまれになりつつある。立ち上げ直後に資金調達するのが以前に比べてずっと簡単になっているからで、それは喜ばしいことだ。とはいえ、吉田氏がこれほど社員への『感謝』を口にするのは、大きなリスクを取り、全てを売ってまで起業し、苦しみを味わったからこそと言えるかもしれない。
10年前の日本では、非正規労働者が経済停滞の一因であるかのように言われたものだが、今ではスキルを持つ人が時間や場所を選ばずに働けることが経済を前進させる鍵になると理解され始めている。クラウドワークスは、間違いなくその鍵を握る一社になった。吉田氏とチームの繰り出す次の一手が楽しみだ。
文:ティム・ロメロ
訳:堀まどか
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【プロフィル】ティム・ロメロ
米国出身。東京に拠点を置き、起業家として活躍。20年以上前に来日し、以来複数の会社を立ち上げ、売却。“Disrupting Japan”(日本をディスラプトする)と題するポッドキャストを主催するほか、起業家のメンター及び投資家としても日本のスタートアップコミュニティーに深く関与する。公式ホームページ=http://www.t3.org、ポッドキャスト=http://www.disruptingjapan.com/