野村総合研究所によると23年の空き家数は約1400万戸に達し、住宅総数に占める割合は約2割になる見通し。空き家が増えると景観や生活環境の悪化を招くだけでなく、適切な管理ができなければ倒壊や火災などの危険も増す。「空き家の撤去促進や中古住宅市場の活性化といった対策強化は喫緊の課題」(野村総研)となっている。
一方で観光目的の訪日外国人が急増し、都市部やリゾート地を中心に宿泊需要が急激に増加。「ホテルが足りない」(旅行業界関係者)状態となっている。このためマンションの空き部屋などを宿泊施設として活用する「民泊」の具現化に向けた動きが顕在化。国家戦略特区で旅館業法の規制緩和の議論も進んでいる。大京の取り組みのように、こうしたニーズに空き家や空室を活用する動きは、今後、さらに拡大する見通しだ。
大京の旅家事業では近所の飲食店との連携も検討。「街をよく知ってもらえることにもつながり、『来年も訪れよう』といった気分にさせる。地域活性化につながる」(大京穴吹不動産の担当者)と事業拡大に意欲を見せる。
まだまだ緒に就いた空室関連ビジネス。「空室をどのように活用するか」といったハードの整備ばかりに関心が集まりがちだ。これと並行して、住民や地域社会との共生といった観点に基づくソフト戦略をいかに推進できるかが、事業の成否の鍵を握るとみられる。(伊藤俊祐)