売れる商品をつくらなければいけないが、どうすればいいのか分からない。迷いを抱えていたころ、一人の職人から、自分の子供が通う幼稚園の保護者から頼まれて、子供向けの器をつくったという話を聞く。
伝統工芸品は大人向けのものがほとんどで、購入者は年配者が多い。子供向け市場は皆無といえた。ここに、新たな市場開拓と次世代への伝統の継承という意味を見いだす。
「幼いころから日本の伝統産業で生み出された本物を使うことで、日本の良さを知り、大人になっても愛用してもらえる。次世代につなぐことにもなる」と子供向けに特化した事業化を構想する。
ビジネスプランをまとめ上げ、複数のコンテストで入賞を果たし、大学4年時に起業する。社名の「和える」は、日本の伝統と現代を生きる人々の感性を、本質を大事にしたまま融合させるという意味を込めた。
生まれた子供が成長し、離乳食を食べるようになったときに使う器は、内側に「返し」をつけることで食べ物がすくいやすく、こぼしにくくなっている。コップは子供の小さな手にぴったりなサイズで、指がかかりやすいよう段差をつけて落としにくい形になっている。