クルマの環境・安全規制強化を世界的に先導し、新興国を囲い込んで基準や評価システムの標準化を推進。今や自動車設計の標準化とオープン化の進化は欧州勢が主導する。サプライヤーと水平分業が進み、互換性の高い部品の組み合わせ技術は“ものづくり大国”日本の力を封じつつある。
迎え撃つトヨタはどうか。2000年代の慢心した経営の反省に立ち、創業家のリーダーシップの下、意図的に成長速度を緩めるブレーキを踏んだ。12年から3年間の「新工場建設凍結」はその象徴だ。規模や台数を成長の「ものさし」からはずし、真の競争力を模索して人材を育成し、持続的な成長を目指している。
ただ守りを固めるだけでは持続的な繁栄はあり得ない。トヨタが攻めに転じる時期はそう遠くないだろう。16年には攻めるべき領域への能力増強が始まり、標準化を進めたトヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャ(TNGA)によるプラットフォームやエンジンの刷新も始まる。欧州戦略への単なる迎合では敵の囲い込み戦略のわなに落ちいりかねない。欧州勢を凌駕(りょうが)する新たなイノベーションを生みだす努力が不可欠だ。(自動車アナリスト 中西孝樹)