競技底辺の拡大を
もう1つは、フィギュアスケートというスポーツが持つマーケティング・バリューである。つまり、メディアにおける露出力でもある。その裏付けとなっているのが、戦略PRと呼ばれるソーシャルメディア時代のPR効果である。個々の選手のそれぞれのファンが、それぞれの思いを一つの試合会場に向けさせる、ある種の世論を創り出しているからに他ならない。戦略PRでは、空気を創っている、という。「ここで応援しなければ」、というファンの思いが、その一人一人がメディアとなって彼らの情報が拡散され、一般世論にも大きく影響している現象を創り出しているのである。そして、その空気創りを後押ししている要因こそが、MPAの存在なのである。
しかし、日本のフィギュアスケートの現状は、日常的に練習できるリンクの数が限られ、育成には多額の費用も掛かり、まだまだ強化支援は足りていない。マーケティング・バリューが高まっているいまこそ、競技の底辺を拡大していくチャンスであり、一競技であっても、この芽を潰してはならない、と私は考える。そして、その動きは、必ずや20年の東京オリンピックにつながる、と確信している。
【プロフィル】今昌司
こん・まさし 専修大法卒。会社各社で営業やスポーツ事業を担当。伊藤忠商事、ナイキジャパンを経て、2002年からフリーランスで国際スポーツ大会の運営計画設計、運営実務のほか、スポーツマーケティング企画業に従事。13年から帝京大経済学部経営学科非常勤講師。ブログは(http://www.plus-blog.sportsnavi.com/umekichihouse/)