今回のG20財務相・中央銀行総裁会議では、先行きに不透明感が漂う新興国経済が主に議論される。ただ、資源輸入などを通じて新興国の景気を左右する中国の「影の銀行(シャドーバンキング)」問題や景気減速懸念が、新興国不安の下地になっているとの見方も根強く、中国の経済運営のかじ取りも大きな焦点だ。
「ミステリアスな“第三者”の登場」
米メディアがそんな紹介をしたのが、1月に中国で高利回りの金融商品「理財商品」に返済不能(デフォルト)の恐れが生じた際、全額買い取りを申し出た謎の投資家だ。
理財商品はシャドーバンキング問題の焦点。10%近い高利回りをうたい、投資資金をひきつけてきた。デフォルト懸念が報道されると、名前も明らかにされない「第三者の投資家」が突然現れ、事なきを得るという不可解な展開となった。「混乱を恐れた中国政府の意を受けた救済策だ」(中国経済の専門家)とも指摘されている。
野村証券によると、2012年以降、同様の商品をめぐる信用リスクの問題が28件あった。12日にも新たな理財商品の焦げ付き懸念が表面化し、投資家が中国リスクに気をもんでいる。
中国をめぐっては統計の水増し疑惑も出ている。12日に発表された1月の貿易統計で、大方の専門家の予想に反して輸出が前年同月比10・6%増と大幅に伸びたが、「不自然だ」との指摘が絶えない。大和総研の金森俊樹常務理事は「1年前にも水増し疑惑があった。今回も香港など主要貿易相手の数値を照らし合わせると、不審さが残る」と疑問を投げかける。
2008年のリーマン・ショック以降、中国は拡大する経済力を背景に存在感を増し、インドネシア、タイ、ブラジル、ロシアなど多くの新興国で輸出先の上位3位内に入る。G20議長国のオーストラリアもその一例で、みずほ総研の菊池しのぶ主任研究員によると、同国の輸出増加分の8割を占める資源関連の4割が中国向け。「中国要因に振り回される経済構造に変質した」(菊池氏)という。
市場では、その中国の景気の先行きへの警戒感が強まっている。製造業の景況感を示す2月のHSBC中国製造業購買担当者景況指数(PMI)が、好不況の分かれ目となる50を1月に続いて割り込むと、20日のアジアの株式市場はそろって下落した。
一方、中国当局もこうした世界の目を意識した動きをみせる。ロイター通信によると、統計水増し疑惑が出た12日、国家統計局幹部は「改(かい)竄(ざん)は最大の腐敗だ」として、改竄が判明すれば処罰する方針をすかさず表明。金融市場の運営では、だぶついた資金を短期金融市場から吸収する公開市場操作を約8カ月ぶりに実施し、堅実な金融市場の運営をアピールした。
「新興国で最大のリスクは中国」(国際金融筋)との声もある中、シャドーバンキング問題などの改革にどこまで踏み込めるか、中国当局の発言がG20参加国の関心を集めそうだ。