東電も昨年、実質国有化され国主導の経営改革がスタートした。新計画では、グループで2000人規模の希望退職者を募る一方、電力小売りの全面自由化を見据えて他社に先駆けて組織改革にも着手。廃炉事業を社内分社化するほか、16年度をめどに持ち株会社へ移行する。
ただチッソの再建スキームと大きく異なるのは、東電だけでなく他の電力各社も原発事故の連帯責任を負わされた点だ。
原発を保有する電力各社は毎年、それぞれ保有する原子炉の出力規模に応じて、原賠機構に「一般負担金」を払っている。12年度の負担総額は1008億円。
事故後、東電を支えてきた他の電力各社は新生・東電に警戒感を抱く。国の支援を受けた日本航空がV字回復したように東電が強力になれば他の電力各社を脅かす存在になるからだ。事実、東電は再建計画に「電力の全国販売」を盛り込み、他社を戦々恐々とさせている。
ある電力大手幹部は複雑な表情でこう打ち明ける。「われわれも負担金を支払っている。なぜ東電だけ支援されるのか…」