誤算だったのは、高機能繊維の代表格で、防弾チョッキなどに使われるアラミド繊維の需要低迷だ。米国の財政再建に伴う防衛費削減で、防弾・防護用途が減った。欧米の自動車関連用途が年度後半から減退したことも追い打ちを掛けた。
後発メーカーとの競争が激化している炭素繊維も、スポーツ用品向けなどで価格が低下している上、天然ガスなどの圧力容器と航空機以外の用途では需要が軟調だった。
帝人は24~28年度の中期経営計画と、32年ごろを見据えた長期的展望を抱き合わせた「中長期経営ビジョン」で、アラミド繊維や炭素繊維複合材料などを成長ドライバーと位置づけ、28年度の売上高を1兆3千億円、営業利益を1千億円とする目標を掲げていた。
年平均1千億円の“成長投資”と、製造効率の向上などによる400億円超(23年度比)のコスト削減も盛り込んだが、鈴木氏は「目標が強気だった」と自戒を込める。同社は業績不振を受け、28年度の収益目標を6月末までに修正し、公表する予定だ。