同社は1921年の創業当時から手がけている腕時計ケースで培った精密加工技術や精密組立技術をベースに、2009年に「医療機器製造業許可」を取得して医療機器関連分野に進出。分析装置や移載・運搬ロボットなどを製品化してきた。
その途上に起きた震災で、3階建ての本社・須賀川事業所は全壊。160人の従業員は無事だったものの、生産設備などは使えなくなり3カ月の休業を余儀なくされた。腕時計ケースなど同事業所の主力製品は受注が30%も落ち込んだ。
この間、手をこまねいていたわけではない。取引先から工場の空きスペースを借り、生産設備を移設して操業再開にこぎつけた。一方で新規顧客の開拓にも動いた。益子氏は「黙って待つのではなく、展示会に打って出て復興をアピールした」という。震災があった11年も含め、メディカへの出展を続けたのは、そうした思いからだ。
そのかいあって、医療用金属材料の腐食や金属アレルギーの解消に対応できる技術をめぐり、医療関連産業が集積する独ノルトライン・ヴェストファーレン州との提携話が浮上。海外需要の開拓に夢が膨らむ。