【わが社のオキテ】ソニー、大企業になっても忘れない“アナログ”の熱き思い (2/3ページ)

2012.4.8 19:00

ソニー創業者、井深氏から社員の子供らひとりひとりにランドセルが手渡される(ソニー提供)

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 万代氏は戦前、国内主要銀行の三井銀行や帝国銀行の頭取や会長を歴任。全国銀行協会連合会会長も務めた財界の重鎮だったが、戦後、公職追放された。ソニー広報によると、万代氏は昭和22年、前年に創業されたばかりの東通工の相談役に就任。28年には「自分はこれまで第3者として育成に努めてきたが、今度は仲間に入ろう」と会長を引き受けた。当時の社長、前田多門氏は「お引き受けくださってありがたい」と語ったという。

 万代氏は岡山県出身。苦学の人で、学生が苦労をせずに学べることを願っており、所有するソニーの株券をすべて母校・青山学院大学へ寄贈するなど、後進の育成に尽力していた。万代氏は「営利会社だから利益を上げなければならないが、いつでも世の中の役に立つことを考えていてほしい」と常に口にしており、井深氏はその言葉に深く影響を受けたという。

 昭和34年、万代氏が亡くなった。当時は戦後復興が進んでいるとはいえ、子供に新しいランドセルを買ってやれるほど余裕のある家は少なかった。井深氏は子供らの入学を祝うとともに、少しでも社員の負担を軽くしようとランドセルを贈る取り組みを発案、数十年間、子供にランドセルを手渡していた。