サポート終了まで1カ月切った「Vista」 シェア1%割りMSも店じまいムード 利用者どうなる?

 
各ウィンドウズのライフサイクル

 パソコン用OS(基本ソフト)「ウィンドウズ」を提供している米マイクロソフト(MS)社は、10年前に発売した「Vista(ビスタ)」に対するサポートを4月11日(米国時間)で全て終了する。今後はウィルス感染などのリスクが飛躍的に高まる一方、使えないソフトや周辺機器が増える。前の世代の「XP」のサポート終了時には大騒ぎになった記憶が強いが、今回は当のMSも店じまいムードが漂う。なぜだろう?

 ■XPの時とは利用者数が桁違い

 米ネットアプリケーションズ社の調査サイト「netmarketshare.com」が公表しているパソコンなどのOSのシェアによると、今年1月分で「Vista」のシェアは0.84%と、初めて1%を割った。1位の「7」47.2%、2位の「10」25.3%とは比較にならない。2月はVistaは0.78%とさらにシェアが減った。

 この数字は何を物語るのか。日本マイクロソフトでは「シェア1%未満ということは、大手企業などの大口ユーザーはほぼ新しいOSやパソコンに切り替えが終わったということ」(広報部)と解釈している。

 この1世代前の「XP」は2014年4月にサポートが終了した。「netmarketshare.com」によると、その前年のXPのシェアは、1位「7」の45.4%に対し、2位で35.4%もあった。打ち切りの前年にパソコンの3台に1台以上がまだ使っていたのだから、リスク軽減のために、最新版など後継製品への切り替えを促すのは供給者の義務として当然だろう。MSの言う通り、今回のVistaとは状況は全く違う。

 しかしシェアは減っているとはいえ、Vistaを利用中のユーザーは確実に残っている。特に法人ユーザーの場合、特定のシステムの稼働を続けるために、Vistaに限らずOSを変更できないでいる事業所や工場などは少なくない。

 こうしたユーザーに対し、日本MSでは公式サイト上に、Vistaサポート終了の専用ページ(https://support.microsoft.com/ja-jp/help/22882)を開設している。ここにはOSを7に変更する方法も説明しているが、「なるべく新しいOSが搭載されているパソコンにハードごと買い替えるようお薦めしている」(日本MS広報部)という。NECなどの大手メーカーでも、「セキュリティ上危険なので、新しいパソコンへの買い替えを検討してほしい」という。

 ■新しいパソコンへの買い替えがベスト?

 なぜ新しいOSへの更新ではなく、パソコンの買い替えを薦めるのだろうか。理由は多い。

 (1)Vistaから最新版の「10」にはアップグレードはできない仕様となっている

 (2)Vista搭載パソコンは最長で10年前の製品。最新OSの搭載には処理能力不足

 (3)古いパソコンだと部品の劣化や交換部品の在庫の問題が出てくる

 (4)非対応のアプリケーションソフトが増える

 OSの更新では、すでに「7」のMSによる「メインストリームサポート」は2年前に終了している。これは販売中の主要製品からは外れたと解釈できる。例え7に更新しても、7のサポート終了まで3年を切っている点も投資効率を考えると見逃せない。

 Vistaから最新版の「10」にアップグレードはできないが、「クリーンインストールはできる」(日本MS)という。10をパッケージ販売などで購入して新規にインストールする。ただし、次にパソコンのハード能力の問題が待ち受ける。

 Vistaが提供開始されたのは2007年1月であり、ちょうど10年前。当然ながら、最新OSを使うには、処理能力もメモリー容量も足りない。少なくとも3-4世代は前の機種ということになる。

 さらに部品の問題も出てくる。ソフト会社の技術担当者によると、「コンデンサーなどの部品が痛んだり、部品が壊れたときに交換部品がメーカーに残っていないケースが出てくる」ため、古いパソコンやサーバーをだましだまし使うことには消極的だという。また情報機器や家電製品ではメーカーの部品保管期間でも10年は壁となっている。

 ソフトも同様だ。昨年春にグーグルがインターネット閲覧ソフト「Chrome(クロム)」に関し、Vistaへの更新対応を早々と打ち切り一部で話題となった。4月11日以降はこうした事態が常態化すると見られる。

 ■4月11日以降はどうなる?

 4月11日をすぎるとどうなるか。日本MSの説明ページによると「新しいセキュリティ更新プログラム、セキュリティ以外の修正プログラム、無料または有料のサポートオプション、オンラインテクニカルコンテンツの更新が提供されなくなる」という。

 とはいえ「パソコンが使えなくなるわけではない」(日本MS広報部)という。市販追加ソフトなど何らかの方法でセキュリティ対策を施し、Vistaを使い続ける企業もあるようだ。また手詰まりとなった中小企業向けに、移行サービスを引き受ける用意をするシステム開発会社やソフト会社もあるが、大きな受注商戦にはなっていないようだ。

 ちなみに、「netmarketshare.com」の今年2月分の調査によると、サポートが3年前に完全に終了している「XP」をいまだに使い続けているユーザーは全体の8.45%もいるという。Vistaユーザーの実に10倍以上に相当する。

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