加熱式たばこの販売競争で火花、JT社長「10年戦争の始まり」 各社の専門店開設相次ぐ
大手メーカーによる加熱式たばこの販売競争に“火”がついている。先行する米フィリップ・モリス・インターナショナル(PMI)が3日、東京・銀座に国内8カ所目の専門店をオープンする一方、追う日本たばこ産業(JT)も同日、福岡市に同社初の専門店を開設する。加熱式は灰や煙、においが少ないといった特徴が受け、市場が急拡大している。ただ、政府の受動喫煙防止の強化策で規制対象となれば、成長が鈍化する懸念もくすぶる。
「最終的にはすべてを加熱式にしたい」。2日会見したPMI日本法人のポール・ライリー社長は、今後は加熱式が主流になるとの見方を示した。
PMIは他社に先駆け2014年に加熱式「アイコス」を発売し、今では国内たばこ市場でシェア約8%を握る。さらに、充電時間を20%短くするなどの改良を加えた新型アイコスを3日に発売し、ライバルを突き放しにかかる。
追いかけるJTは、「プルーム・テック」を昨年3月にインターネットと福岡市内限定で発売したが、今年6月には東京でも販売を開始。来年の上期には全国で展開する計画だ。JTの小泉光臣社長は「今年は“10年戦争”の始まりだ」と巻き返しを誓う。
一方、最後発の英ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)も追い上げのピッチを速める。昨年12月に「グロー」を仙台市内で発売したが、年内には全国で販売する方針だ。
JTによれば、国内たばこ市場に占める加熱式の構成比は昨年末で5%程度。これが今年末には15%まで上昇する見通しだ。加熱式は紙巻きと同様に葉たばこを使うが、火で燃焼させずに、電気で熱して蒸気を吸う仕組み。喫煙時にベランダに追いやられていた“ホタル族”も、リビングで堂々と吸えるなどとして人気に火が付いた。
PMIによれば、禁煙スペースでもアイコスが吸える飲食店などの施設は全国で1万カ所以上あり、増える傾向にあるという。
しかし、政府は訪日外国人が増える2020年東京五輪・パラリンピックなどを見据え、受動喫煙対策を強化する方針だ。厚生労働省は加熱式について「受動喫煙の影響が明らかでない」(担当者)とし、規制の対象にするかを今後判断する考えだ。仮に飲食店での禁煙など紙巻きと同様に規制されれば、普及に冷や水を浴びせかねない。(大柳聡庸)
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