アサヒグループHD社長・小路明善さん(65)

2017 成長への展望

 ■海外事業を成長のエンジンに

 --ベルギーのビール最大手、アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ)から、西欧ビール4社を買収し、昨年12月には、東欧5カ国のビール事業の買収にも合意した

 「ようやく世界展開のスタートラインに立てた。ただ、ABインベブが英SABミラーを買収し、世界シェアの3割を握り、違う戦い方をしなければならない。今回の買収で、チェコの『ピルスナーウルケル』やイタリアのペローニの『ナストロ・アズーロ』など高級ビールブランドを手に入れた。規模を追わず、普及価格帯をしっかり売りつつ、世界的な高級ビールメーカーを目指したい」

 --今回の買収でグループ戦略はどうなるのか

 「国内事業は安定的にキャッシュを創出する基盤で、海外事業をグループの成長エンジンと捉えている。東欧5カ国のビール事業の買収が決まれば、海外の売上比率が16%から24%に高まる。欧州では2018年以降、『スーパードライ』の現地生産も計画しており、販売拡大を目指している。オーストラリアや東南アジアの事業も伸ばし、将来的に売り上げ全体の3分の1程度を海外が占める形にしたい」

 --東欧5カ国のビール事業の買収額が約9000億円で、市場では割高との声も出ているが

 「企業価値を算出すると、インベブによる米アンハイザー・ブッシュやSABミラーの買収額の方が割高だ。確かに高い買い物だが、私は大きな買い物をしたと思っている。投資家に説明できる上限額だ」

 --ベトナム政府が国営ビール会社の株式売却を検討している

 「サイゴンビール・アルコール飲料総公社については情報を入手して研究している。持続的な成長を目指しており、欧州の買収で終わりとは考えていない」

 --17年度の税制改正大綱で、ビール類の酒税一本化が決まった

 「積年のビール税改正に第一歩を踏み出した決断は評価したい。新ジャンルを飲む消費者も多く、期間が10年かかるのは仕方がない」

 --キリンビールと北陸地方で、共同配送を始める。キリンはさらなる協調を求めているが

 「シェアをとっても利益が上がらなければ、魅力のない市場になる。国内のビール市場の魅力を高め、拡大基調にするのが一番大切で競争と協調を明確にする必要がある。付加価値のところで競い合い、協調するところは積極的に協調したい」

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【プロフィル】小路明善

 こうじ・あきよし 青山学院大法卒。1975年アサヒビール入社。アサヒ飲料専務取締役、アサヒビール社長などを経て、2016年3月から現職。長野県出身。