MRJ、受注競争のカギ握る米国飛行試験 もう納期遅れは許されず

 
米西部ワシントン州モーゼスレイクの空港に到着し、歓迎の放水アーチをくぐるMRJ=28日(共同)

 MRJの試験1号機が約1カ月遅れで、米ワシントン州モーゼスレイクの空港に到着した。これから飛行試験を本格化させる。ライバルのブラジルのエンブラエルとの受注競争が激しくなっており、これ以上の納期遅れは許されない。米国での飛行試験を計画通りに進められるかが、今後の受注競争を左右しそうだ。

 28日にグラントカウンティ国際空港に到着したMRJは10月から飛行試験を本格化させる。2018年半ばにANAホールディングス(HD)に引き渡し予定のMRJは2500時間の飛行試験を行い、同年中に運航に必要な「型式証明」の取得を目指す。

 1号機に続いて、2~4号機も、飛行環境が整ったモーゼスレイクに順次持ち込み、これから安全性の確認や寒冷地など特殊な条件下で試験を行う。

 半世紀ぶりの国産旅客機となるMRJは開発の遅れで4度も納期を延期。米国での飛行試験も不具合で開始が約1カ月遅れた。国土交通省の関係者は「不具合も不安だが、型式証明の取得も50年ぶりで、手続きを迅速に進められるかが課題だ」と指摘する。

 一方、ライバルのエンブラエルは燃費性能が高いMRJと同じエンジンを採用した同型機の開発を進め、20年に引き渡す予定。18年にMRJより座席数が多い旅客機も投入する予定だが、今年5月に初飛行を計画よりも前倒しして成功させた。エンブラエルは型式証明の取得を含め、機体開発の経験が豊富で、MRJよりも優位な立場だ。

 100席以下のリージョナルジェット市場は今後需要増が見込まれ、三菱航空機は計1000機の受注獲得を目指している。現在、計447機の受注を獲得しているが、残りの分を積み重ねるには、これ以上の納期遅れは許されない。ライバルの足音が近づく中、米国での飛行試験の重要度は確実に以前よりも増している。(黄金崎元)