MRJ、飛行試験に向け米拠点到着 受注競争激化で いっそうの納期遅れ許されず
三菱航空機(愛知県豊山町)が開発中の国産初のジェット旅客機MRJ(三菱リージョナルジェット)が28日夕(日本時間29日午前)、米ワシントン州モーゼスレイクの空港に到着した。10月から本格的に飛行試験を開始する。ライバルとの受注競争の面から、これ以上の納期の遅れは許されず、米国での飛行試験の重要度が増している。
MRJの試験1号機は現地時間の28日午後5時45分ごろ、モーゼスレイクのグラントカウンティ国際空港に着いた。当初は8月の米国入りを試みたが、機器の不具合で、2日続けて離陸後に引き返し、約1カ月遅れの到着となった。
三菱航空機は平成30年半ばにMRJをANAホールディングス(HD)に引き渡す予定。2500時間の飛行試験を行い、同年中に運航に必要な「型式証明」の取得を目指す。1号機に続いて、2~4号機も飛行環境が整ったモーゼスレイクに順次持ち込む。
MRJは開発遅れで4度も納期を延期している。米国入りも約1カ月遅れた。国土交通省の関係者は「不具合も不安だが、型式証明の取得が50年ぶりで、手続きを迅速に進められるかが課題だ」と指摘する。
一方、ライバルのブラジルのエンブラエルは燃費性能が高いMRJと同じエンジンを採用した同型機を32年に引き渡す予定。5月には30年に投入予定のMRJよりも座席数が多い旅客機の初飛行を計画よりも前倒しして成功させた。
エンブラエルは型式証明の取得を含め、機体開発の経験が豊富でMRJよりも優位な立場にある。
三菱航空機は計1千機の受注獲得を目指しており、現在、計447機の受注を獲得している。残りの受注を積み重ねるには、これ以上の納期遅れは許されない。(黄金崎元)
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