知恵絞るブライダル市場 少子高齢化、ジミ婚、晩婚化でジリ貧

 
7月に拡張移転した「すぐ婚naviウエディングデスクヨドバシ梅田店」(エイチーム提供)

 少子高齢化にジミ婚、晩婚化…。結婚式・披露宴の簡素化が定着しており、ブライダル業界にとっては厳しい環境が続く。そんな中、新規参入した企業が元気だ。式場の立地にこだわったり、挙式まで数カ月しかないカップルに対して特典を用意するなど知恵を絞る。一方で、ふだんは披露宴に使われる宴会場を高級レストランとして一般に開放したりと、新しいビジネスモデルが次々に芽生えている。(栗井裕美子)

 大阪駅直結のレストラン

 8月26日、金曜日の夜。JR大阪駅(大阪市北区)に直結した高層ビル「大阪ステーションシティ」28階のレストラン「ラグナヴェールプレミア」で、夕食会「エアーズ×エスクリ ガラ・ディナー」という名のイベントが開かれた。

 1万8千円という高額な参加費にもかかわらず、関西や首都圏などから約120人が訪れた。レストラン店内は豪華で落ち着いた雰囲気で、窓からは地上150メートルの眺望が広がる。ドレスアップした客たちは、洗練された接客を受けながらフランスの有名なワインと著名シェフによるイタリア料理を楽しんだ。

 実はこのレストラン、全国各地で結婚式場を運営する「エスクリ」が経営している。本来は、結婚式の披露宴の会場として使われているが、披露宴が行われない日はレストランとして活用している。

 同社がこうした取り組みを本格的に始めたのは2年前。宴会場は、結婚という「晴れの日」の演出のためにもともと豪華にしつらえており、同社がこだわる施設の立地、従業員の接客、食材の調達力などがフル活用できるという。

 現在、レストラン事業は大阪と東京の7施設で展開しており、売り上げは前年比1・4倍と伸びている。渋谷守浩社長は「レストランとして活用すると多くの人に喜んでもらえる。経営としても無駄がない」と話す。

 矢野経済研究所の調べでは、平成27年の挙式披露宴市場は前年比99・4%の1兆4160億円(見込み)で、ここ数年は微減の傾向が続いているようだ。結婚式をしないという意味の「なし婚」という言葉が定着するなど、結婚式の簡素化を好むカップルが増えているのも要因だという。

 15年設立のエスクリは、レストラン事業など柔軟な発想による事業展開が奏功して現在は全国で30施設を運営している。

 電撃結婚も歓迎

 ほかにも、ターゲットを絞り込むことで成功している企業がある。

 15年創業のバリューマネジメント(大阪市北区)は、全国10カ所で歴史ある古い建物を改修するなどして、挙式や披露宴の会場として再利用。今年5月には、大阪で平成7年に開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の際に建設された大阪城西の丸庭園内の大阪迎賓館をリニューアルオープンした。NHK大河ドラマ「真田丸」にちなみ、戦国時代の衣装で行う挙式・披露宴も提案している。

 きれいな建物より重厚感のある建物、歴史が好き-などといったニッチな層を狙った戦略が当たり、バリューマネジメント社の27年の売り上げは、前年比9%増の約47・4億円、28年は50億円を超える見込みという。

 一方、エイチーム(名古屋市)は、20年から情報発信サイト「すぐ婚navi(ナビ)」を運営。国内外の約600会場と提携し、予約後の半年以内に式を挙げるカップルに対して、割引などを行うサービスを展開している。

 同社は、「なし婚」を選ぶカップルは、結婚願望のあるカップル全体の45%を占めると独自に算出。交際中に妊娠したため準備期間が十分に取れないケースのほか、経済的な理由も多いと分析する。このため、カップルの不安や疑問、相談に応じるための店舗を全国12カ所に設置。今年7月には、関西の旗艦店「すぐ婚navi ウエディングデスク ヨドバシ梅田店」を拡張移転させた。

 同社広報担当は「結婚式は家族や友人とのきずなを認識できる大切な1日となる。カップルの気持ちに寄り添いながら、“なし婚”を減らしていきたい」と話している。