熊本地震 観光客離れ、九州全域に危機感 周遊型多く打撃

 
閑散とした「海の駅べっぷ海鮮市場」=4月28日、大分県別府市

 熊本県は13日、熊本地震発生後の県内宿泊施設の予約キャンセル数が11日時点で約33万泊に上ったと発表した。客離れは大きな被害のなかった県南・北部から九州全域にも及び、「夏休みまで続けば倒産する事業者が出る」(石原進・九州観光推進機構会長)と、関係者の危機感は強い。韓国や中国からの距離が近い九州は訪日客拡大に向けた強い原動力でもあり、政府は観光キャンペーンの展開などで復興の後押しを急ぐ。

 宿泊施設28軒が並ぶ熊本県北部の黒川温泉(南小国町)。地震の被害はほぼなかったが、ふもと旅館の女将、松崎久美子さんは「街はがらがら。特に韓国、中国のお客はぱったり姿を消した」とため息をつく。

 韓国・釜山と福岡を結ぶ高速船は、大型連休中の乗客数が6割落ち込んだ。利用減をうけ、チャイナエアラインは熊本-台湾・高雄間の週3便を今月末まで運休すると決定。韓国の格安航空会社ティーウェイ航空もソウル-大分線(週4便)を5月一杯運休する。

 客離れは熊本、大分両県にとどまらない。長崎では5、6月の修学旅行が約8割キャンセルされた。

 砂風呂で知られる鹿児島県の指宿温泉(指宿市)も「大型連休中の稼働率がわずか4割」(有村青子・指宿シーサイドホテル常務)と苦戦した。「九州の“へそ”である熊本と大分の被災は大きな打撃」という。

 影響が広範囲に及んでいる背景には「九州観光は一カ所だけでなく、複数地域を周遊する客が多い」(小野泰輔・熊本県副知事)という事情がある。

 九州7県の経済団体などでつくる九州観光推進機構によると、宿泊キャンセルは、地震被害が大きい熊本市や阿蘇地方を除いても震災発生後20日間で70万件を超えた。影響額は140億円に上るとみられる。

 同機構の石原会長や7県の副知事らは11日に菅義偉官房長官と面会し、熊本城をはじめとする観光資源の再建や中小事業者の経営支援、風評被害対策などを要望した。菅氏は「最も効果のある対応策でしっかりと支援したい」と応じた。

 九州観光の復活は、最盛期の夏までが正念場だ。